女優
大竹 しのぶさん
私が南先生とお逢いしたのは、今から十年前、フランスのアノネという小さな町で行われた先生のお嬢様の結婚式でした。
美しい街で、美しい心の人たちが集って、心のこもった素晴らしい結婚式でした。
一足先に帰る私を、先生は空港まで送って下さいました。
一面に咲き誇るひまわり畑や杏の花が咲いている道を走りながら、先生は臓器移植について、分かりやすく丁寧に、けれど熱く語って下さいました。
ドイツでは500件以上行われている手術が、日本では数件あれば良い方であること。
寄付金などで費用を工面し、危険だけれど海外でしか受けられない現状。
子供には許可が下りていないこと(その後平成22年に法改正されました)。
私自身正直、全く今まで考えたことのない問題でした。
早速日本に帰り、臓器提供意思表示カードはどこに行けば手に入るのか、区役所に電話を入れました。窓口に置いて有ります、との素っ気ない返事。
近くの出張所に行ってもすぐに見当たりません。
よく見ると、カウンターの隅に何の説明もなく山積みに置かれていました。
それが縁で、第一回のハートtoハートで先生の手術を受けて元気になった、
えりかさんの詩を朗読させて頂きました。
あれから十年。
まだまだ沢山の問題が山積みなのだと思います。
脳死の判定、どこをもって死とするか。また遺体への尊厳が失われると、お医者様同士が話されているのを聞いて、その認識の違いに驚いたこともあります。
それらの問題をひとつひとつクリアしながら進めていかなければならないのは、とても大変なことだと思います。
が、誰もが分かっているのは、今、助かる命があるということ。
そして、助けなければならないということ。
私も私なりに、しっかり考えていきたいと改めて思います。
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